「誘導的しつけ」とは、頭ごなしに叱るだけではなく、どうしてそれがいけなかったのか、他の人がどう思ったのかなど、ルールを守らせるために理由を説明することです。
日常の中で繰り返される「してはいけないこと」を理由とともにお子さんに伝えることで、相手の立場になって物事を考えることができるようになります。
叱らない育児の弊害
「褒めて伸ばす」「叱らない」育児を履き違え、子どもが危険なことをしても他人に迷惑をかけても黙って見守る保護者が一定数います。
子どもを叱るにはエネルギーが要りますし、子どもは何度も同じことを注意されてもルールを守ることができないこともあるでしょう。
「うちは叱らない育児をしているから」といって叱らないでいると、危険なことも他人の迷惑も苦しみも嫌な思いもまったくわからない、感じない子に育ってしまいます。
相手の嫌な気持ちがわからないので、相手がなぜ自分の行動によって気分を害しているのかがわからないのです。
自分の言動が相手の感情に影響を及ぼすことがわからないため、罪悪感がなく、道徳心がない子に育ってしまいます。
事前にルールを伝えて理由を説明する
例えば電車に乗る前にルールとペナルティをお子さんに伝えます。
「電車の椅子に靴のままで乗ったり飛び跳ねてはいけないよ。守れなかったら電車を降りるからね」
上記に、下記のように理由の説明をつけてみましょう。
「電車の椅子に靴のままで乗ったり飛び跳ねてはいけないよ。自分が乗ろうとしたときに汚れていたりシートがよれていたら嫌でしょう?守れなかったら電車を降りるからね」
理由をつけた場合は、お子さんがルールを守れるケースが多くなります。
きちんと理由を説明すれば、お子さんも納得できるのです。
仮に靴のママ椅子に乗ったり、飛び跳ねたとして電車を降りても、理由とルールを守れなかったためという結果をしっかりと伝えることで、今後につなげることができます。
頭ごなしに叱らない
しつけというと虐待を隠すための理由のようにとらえる方もいらっしゃいます。
しかし、本来しつけは社会の中で子どもが生きづらさを感じないための最低限のマナーを教えること。
相手の立場に立ち、感情の動きなどに配慮してさまざまな場面で適用させることです。
「誘導的しつけ」ではない理由を説明せずに「あれはダメ」「これはダメ」と頭ごなしに叱っていると、ルールを守るのではなく保護者の顔色を伺いながら物事をはんだんするようになります。
自分が相手を傷つけるようなことをしても謝らなければいけないことがわかりませんし、理由がわからないので自分が悪いからではないと考えるでしょう。
そういった道徳心が欠如してしまった場合、目上の人を警戒するようになります。
社会に出ても自分の道徳心や理性に従って行動するのではなく、自身が驚異と感じる権力をもった人や保護者の意見次第で行動を変える主体性のない人間になってしまうのです。
保護者がしっかりと危険や迷惑行為に関する「やってはいけない理由」をきちんと説明することで道徳心のある理性的な大人に育つことができるでしょう。
他人の感情を知り、自分の感情をコントロールできてこそ賢い子に育つのです。