
桃太郎と鬼が協力して遊園地を建てるために銀行へ足を運びました・・・
大手の銀行各社は、主に小学校低学年以下の子どもたちを対象とした金融や経済の教育に本格的に取り組み始めています。
子どもたちに興味を持ってもらえるよう、絵本やゲームなどを活用しながら、さまざまな工夫を凝らしています。
(※2025年6月21日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
桃太郎なら伝わる?お金と仕事の大切さ
みずほフィナンシャルグループ(FG)では、社員2人が約1年半かけて絵本の制作に取り組んでおり、現在その完成が目前に迫っています。
この絵本は「桃太郎」の物語をベースにしながらも、現代的なテーマを取り入れた内容となっています。
物語では、桃太郎が「鬼たちも職に就き、お金を稼ぐことができれば、人間から物を奪う必要がなくなる」と気づきます。
そして鬼たちと協力し、鬼ケ島に遊園地を建てるために銀行から資金を借り、事業を始めるというストーリーになっています。子どもたちにも仕事やお金の役割をわかりやすく伝える工夫がされています。
10月9日には、この絵本を制作した社員2人が東京都渋谷区の小学校を訪れ、出前授業を実施しました。
小学2年生のおよそ30人を前に読み聞かせを行ったところ、ある児童は「鬼が鬼ケ島で暮らすなら、遊園地よりもスーパーや銀行を建てた方が生活しやすいと思う」と感想を述べていました。
絵本で伝えるお金の大切さと想像力とは
絵本の制作に携わった篠原里英さんは、子どもたちが鬼の生活にまで思いを巡らせたことに驚きを感じたそうです。
「お金の使い方について、身近な視点で考えてもらえた」と、手応えを語っています。
絵本は今秋、完成版として全国の小学校に3,000部寄贈される予定です。
一方、ソニー銀行も絵本を金融教育への入り口として活用することを目指しています。
小学1~3年生を対象とした絵本に焦点を当てた「お金を学ぶ絵本大賞」という取り組みを開始しました。
今年5月には、応募された103作品の中から初の大賞作品として「動物村で考える お金ってなんだろう」(伊藤文人さん作)が選ばれました。
この作品では、リスやパンダ、サルたちが物々交換を通じてお金の意味を学ぶ内容となっています。
ソニー銀行は、この受賞作品を教育系NPOに提供するほか、同行の利用者にもプレゼントとして配布する予定です。
早期から始めるお金の学び、絵本がつなぐ家庭と教育
金融に関する教育は、2020年度から小・中・高校の学習指導要領に段階的に取り入れられました。
金銭管理や資産形成といった内容は、主に家庭科の授業を通じて学ぶことになります。
しかし、未就学児や小学校低学年の子どもたちにとっては、こうしたテーマに触れる機会がまだ限られています。
銀行各社は、こうした年齢層にも学ぶきっかけを提供し、中学・高校で始まる本格的な金融教育に対するハードルを下げたいと考えています。
中でも絵本は、読み聞かせという形で子どもと接することで、保護者も一緒に金融について学べる点が大きな利点とされています。
広がる子ども向け金融教育、ゲームや出前授業で身近になる
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は今年4月、小学校低学年の子どもでも楽しく学べるオンラインゲームを開発しました。
このゲームは、7月以降に学童クラブなどへ提供される予定です。
りそなホールディングスは、全学年の小学生を対象とした夏の特別プログラム「キッズマネーアカデミー」を毎年開催しており、今年で20回目を迎えます。
また、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)では、全国の支店が地元の幼稚園や保育園、小学校などの要望に応じて、出前授業を行い、お金の役割についてわかりやすく伝えています。
大手銀行で金融教育を担当する職員は、「キャッシュレスが進んだことで、子どもたちにとって現金の存在が以前よりも身近ではなくなってきています」と述べています。
その上で、「より多くの年代に金融教育を広げていきたい」と話しています。
