コロナ禍で長く休校が続いた学校現場。家庭での学びを学校はどれくらい支えられたか、いくつかの自治体が調査に乗り出しています。ここでは、千葉県、埼玉県、福岡県の調査結果をもとにしています。
ネット環境に恵まれない子どもたちへの支援不足
埼玉県教育委員会は5月下旬、さいたま市を除く小学校、中学校1000校あまりについてい、以下を調査しました。
・情報通信技術(ICT)環境が整っていない家庭の子ども
・特別支援学級の子ども
・日本語の指導が必要な子ども
ICTを使って家庭学習を支えていた学校は、小学校で84%、中学校で80%。しかし、ICT環境の整っていない家庭を把握しながら、現段階では支援できていない、と回答したのは、小学校で30%、中学校では31%にもなりました。
さらに、日本語の能力に応じた指導教材を使ったのは、小学校が24%、中学校が23%にとどまりました。
福岡県では、家庭のPCやタブレットを使用させた割合は2割にとどまる
福岡県教育委員会では4月中旬、北九州市を除く小中学校600校余りに対し、休校中の学習と心身の状況について調べました。
特に課題が浮かび上がったのはICTの活用です。
学校のホームページやお知らせメールなどで情報提供している学校は7割ほどありましたが、家庭のPCやタブレットを使用させているのは小中学校共に約2割程度。学校の端末を貸し出しているのは1%にも満たなかった現状が分かりました。
授業再開後、また学び直しが必要な状況
千葉県の教育委員会は、5月末から6月初めにかけて、千葉市を除く小中学校900校余りを調べました。
小6と中3では、家庭学習が定着せず、再度学び直しが必要だった学校は88%にも上りました。それ以外の学年でも86%と高い数値になっています。
授業をやりなおす学校が予想以上に多い、という厳しい結果になった、と受け止めています。
学校が再開されて、どのようにこの遅れを取り戻していくかが重要です。
専門家は「集計だけではなく分析を」
ただ集計するだけではなく、学級の数や生徒数で分析したり、就学援助率のデータと重ね合わせたりすれば、家庭と経済状況の関連も分かってきます。分析が難しいのなら、大学の研究機関などの手を借りて分析をしてほしい、と早稲田大学教育社会学の松岡亮二准教授は語っています。
2020年8月31日(月)朝日新聞朝刊より出典