AIという言葉は広く認知されるようになりました。今では学校現場で活かそうという取り組みも行われています。大津市ではいじめの精査、埼玉県は学力の調査にAI分析を取り入れているそうです。
過去に辛い事例があり批判を浴びた大津市
2011年にいじめを苦に中学生が命を絶った事例がありました。当時は学校・教育委員会の対応の鈍さに批判が集中。いじめをAIで判断し、深刻度を計る取り組みを始めました。
大津市教育委員会はいじめチェックシートと過去のケースをAIで分析し深刻化の恐れがあるいじめ事案をリストアップできるようになりました。
例えば、被害者の欠席日数が3日以上、収束までの4ヶ月以上、など。また、細かい事例では、SNSが絡む場合、被害者の迅速なケアが遅れた場合、男女混合の場合は深刻化する割合が高いなどが判明しました。
AI分析ソフトで教員を助言・サポート
教員自身が対応を見極めるうえで、AI分析の結果は貴重な指針となります。これから若い教員がどんどん増えていくため、的確な対応につなげられれば、と考えています。
いじめは少なくすることはできても、全くなくならないのが現状です。起きなくすることも大切ですが、起きたらどうするかのほうが大切かもしれません。
埼玉県は学力向上のためにAIを活用する
埼玉県は、生徒の定期試験の結果、部活動の活動状況、体力テストの結果、生活習慣アンケートなどからAIを用いて分析し、学習のつまづきを把握したり学力の伸びを予測したりしています。
教員が一人ひとりの学力に応じて作成するアドバイスシートや教材、進路支援にいかすとのこと。
とにかく扱うデータが膨大なため、一人ひとりに合った指導ができれば教員も生徒も安心です。
教育委員会は学力の将来予測などを行い、もっと頑張ろうという気持ちに持って行きたい、としています。
個人情報の管理が課題
一番懸念されるのが生徒の個人情報です。いじめの詳細な事例把握は、個人情報の観点から「学年」「発覚の経緯」「いじめのかたち」などにとどめているとのこと。
膨大なサンプルが手に入れば詳細な予測は可能になります。しかし、その子の人格や、家庭環境の問題が明るみに出る可能性は十分にあります。それが原因でレッテル貼りにつながらないようにしなければいけません。
子供には無限の可能性がある、としてきた教育倫理。その考えを相反する事態にならないように、データの扱いは特に慎重にしなければならないでしょう。
2020年1月19日(日)朝日新聞朝刊より出典