幼保無償化により、利用料を値上げする幼稚園が増加

10月から始まった幼保無償化政策。しかしそれに伴い、利用料を値上げする園が後を絶たないのだそうです。
「丸々浮いた保育料を他に回せる!」と考えていた保護者もいるでしょう。そう単純にはいかないようです。

名古屋市の幼稚園の例

名古屋市のある幼稚園では、10月から利用料の値上げを始めました。保護者には「おねがい・・・」と題した手紙を配ったとのこと。
いままでは授業料として23,700円を徴収していましたが、10月から授業料が25,700円、それとは別に給食費4,500円を徴収します。
25,700円とは、園児一人当たり無償となる上限額。無償になる金額めいっぱいまで上げたことになります。幼稚園は「どうせ補助されるんだからいいだろう」と考えている節もあるようです。

ただ、保護者に手紙だけ配り何も説明をしないのは無責任という意見もあります。保護者が使い道をたずねても明確な答えを返さず、「国に搾取されないためにはこうするしかない」のようなニュアンスで濁されたとのことです。

兵庫県の幼稚園の例

兵庫県のある幼稚園では、きちんと保護者会を開きいて説明を行い、保護者に納得してもらったとのこと。
資料には値上げした分をどう使うかを明記していました。具体的には、教論の基本給の引き上げ、担任の増員、体育専門講師の依頼など。きちんと説明会を開いた甲斐もあり、保護者から特に大きな問題点は指摘されなかったようです。

一般的に、認可保育園・子ども園は市町村が保育料を定めています。一方私立幼稚園は各園が独自で設定しています。
値上げ幅も園によって開きがあったりするのでしょう。ただ、何に使うのか明確に示すことで、理解は得られるでしょう。

浮いた利用料で貯蓄したいのに・・・

子どもの将来のために貯蓄したい、3人目が欲しい、習い事をさせてあげたい・・・このように計画を立てていた保護者もいたでしょう。でも実質値上げされてしまい、負担がそれほど変わらなかったら、何のための子育て世帯への支援なのだか、分からなくなってしまいそうです。

そもそも、幼保無償化は子育て世帯への支援が目的。消費税の増税もやむなく受け入れました。
保育士や幼稚園教論の待遇改善は、これとは別の問題でもあります。結果的に職員の待遇改善やし設備投資に使われることだったら、本来の目的を果たしているのかと疑問も感じます。

保育の質が本当に向上したのか?

園側にも事情があるでしょう。待遇が低いので職員がすぐやめてしまい、つなぎとめたい気持ちもあるかもしれません。
だから「国から補助されるのであれば、すぐにでも職員の待遇を改善したい」と考えるのは分かります。

しかし、値上げが本当に保育の質の向上に繋がっているのか、チェック体制が不十分なため、国や自治体がしっかりとチェックする体制作りが求められます。

2019年9月30日 朝日新聞朝刊より

2019年10月2日 朝日新聞朝刊より