不登校が増える休み明け。苦しむ子どもたちへの声掛けは?

 

長期休み明けには、不登校や自殺といった問題に直面する子どもたちが増加する傾向があります。
こうした子どもたちにどのような言葉をかけるべきかについて考える機会として、朝日新聞は2024年9月1日に教育関係者を対象にした無料のオンラインセミナー「夏休み明けに苦しむ子どもたちへの言葉」を開催しました。
このセミナーでは、3人の講師がそのためのヒントを共有しました。
(※2024年9月30日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

子どもの感情に寄り添い、不安と向き合う支援のあり方

東京都杉並区立高井戸東小学校で養護教諭を務める竹川優子先生は、子どもたちの苦しみに対して「大人はつい『嫌な気持ちを抑え込む力』を育てようとしがちですが、本当に必要なのは『嫌な気持ちのまま過ごせる力』です」と語りました。
竹川先生は、いじめなどで不安を抱えた子どもが「怖くて教室に行けない」と感じるのは、生存本能に基づく自然な反応であり、問題を未解決のまま適応を強いることの危険性を指摘しています。また、SNSの普及により夏休み中でも人間関係が変化するため、席替えや保護者との連携などを通じて教室内の不安を解消することが基本だと述べました。
勤務校では、別室登校を選ぶ子どもたちに対し、教員が1週間の予定を一緒に確認し、無理のない授業から参加できるよう配慮しています。学校に対する安心感を持たせること、クラスの一員であるという所属感を感じさせること、そして学ぶことによる達成感を提供することが重要なポイントだと竹川先生は強調しています。

子どもにとっての「安全基地」を築く大人の役割とは

杉並区立済美養護学校の主任教諭、川上康則先生は、子どもたちが意欲的かつ主体的に行動するためには「安全基地」のような大人の存在が必要であると述べています。安全基地とは、子どもが挑戦する際に背中を押してくれるだけでなく、困難に直面した時に安心して戻れる場を提供する大人のことを指します。
川上先生は、「安全基地のような関係は日常生活の中で育まれる」と強調します。例えば、子どもが「むかつく」といった強い言葉を発した際には、「むかつくほど悔しかったんだね」と感情を代弁し、子どもの気持ちを理解していると伝えることで、安心感を与えることができると言います。また、子どもが特に安心を感じるのは、笑顔で穏やかな態度を保つ大人だとしています。
一方で、教員は保護者や同僚との関係でも感情を抑えたり忍耐を求められる場面が多く、「笑顔を保つことが難しい時もある」と指摘。そのため、教員自身が気持ちに余裕を持つことが、子どもにとっての「安全基地」を築くためには欠かせないと語っています。

自殺をほのめかす子どもへの適切な対応と寄り添い方

自殺をほのめかす子どもへの対応について、日本自殺予防学会の理事である阪中順子先生は、「行動の変化に違和感を覚えた際、それを自殺の前兆として捉え、丁寧に関わることが重要です」と述べました。
さらに、自殺予防の基本として「TALKの原則」を紹介しました。これは、T(Tell:心配していることを伝える)、A(Ask:死にたい気持ちや背景を率直に尋ねる)、L(Listen:絶望感に耳を傾ける)、K(Keep safe:安全を確保する)という一連の行動を指します。また、「死にたい」という気持ちを尋ねることが危険を増幅させることはないとも説明しています。
リスクが高い子どもたちは自己評価が低いなどの課題を抱え、表面的には助けを求めていないように見えることがあります。しかし、「一人がいい」といった言葉の裏には、友人や信頼できる人を求める気持ちが隠れている場合もあると指摘しました。
阪中先生は、「『死にたい』という発言を咎めるのではなく、その奥にある言葉にならない悩みを共に探り、向き合うことが大切です」と強調しました。

主な相談先

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【いのちの電話】0120-783-556 毎日午後4~9時
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