2018年12月に施行された「成育基本法」。育児中の親やプレママ・プレパパでも知らない人がいるのではないでしょうか。
日本産婦人科医会や日本小児科医会としては、かねてから成立を願っていた法案とのこと。
改めて、「成育基本法」とはどのようなものでしょうか?
「成育基本法」って?
簡単に言うと、子ども達を中心に考えた社会を目指そう、というものです。単に子どもの支援といっても、それは妊娠から始まり、出産、育児と継続的に行われなければならないもの。ある一時期だけ支援をしても、継続的な支援とは言い難いのが現状です。一時期だけサポートを受けられても、サポートが終了したらまた孤立した育児が待っている・・・これでは意味がありません。孤立した育児で悩んでいる人を継続的にサポートすることが目的です。
出発点は医療ケアからでしたが、医療と福祉は密接に関わっています。これらを連携し、継続支援体制を整えることで、誰もが安心して子育てができる環境を作っていこうとするものです。
乳幼児期の愛着形成期の支援
子どもの虐待やネグレクトは社会問題となっていますが、乳幼児期の赤ちゃんにとって信頼できる養育者との愛着形成は非常に大切で、その後の生育に大きな影響を与えます。
赤ちゃんが養育者と触れ合い、見つめ合ったりあ微笑みあったりすることで、双方に愛情ホルモンと言われるオキシトシンが分泌されることが分かっています。これは男性でも、出産経験のない女性でも分泌されます。
元々は母乳を出すためのホルモンですが、嬉しい・楽しいなどの感情と関わっており、このホルモンが分泌されるとさらに幸せな気持ちになります。その幸せな気持ちが赤ちゃんと養育者の結びつきを強めますし、母乳生成も促します。赤ちゃんの愛着の形成もされていきます。これは乳幼児期の赤ちゃんにとって最も大切なこと、といってもいいでしょう。
愛着の形成は医療や保育の現場では常識
育児や養護を専門的に勉強してきた有資格者であれば、愛着形成の大切さは十分心得ています。しかし、このような知識のないまま妊娠・出産し育児が思うようにいかずに悩む人もいるのが現状です。
乳幼児期の赤ちゃんが周りの人からたっぷりと愛情を受けて育つことで、情緒が安定し、人格の土台を形成します。これは人の一生を左右するほど大切なことです。
成育基本法では、そのようなことを社会に広く認知させることも目的としています。
乳幼児期に愛着形成が不十分だと愛着障害に!?
虐待やネグレクトによって、養育が適切に行われないと、愛着障害を引き起こします。養育者から十分に愛情を受けられない生育環境にある乳幼児がこのまま大きくなると、問題行動が増え、周りとのトラブルが多くなります。うつ病や薬物依存になる人もいます。
こういう人たちを幼少期から救うことで、社会的損失を大きく減らせることができるのです。
乳幼児期に虐待を受けると、乳幼児は外部からのストレスに耐えらるように情報量を減らしていき、脳を委縮させていきます。これは一種の防衛反応。脳が委縮すると脳の働きに影響が出ます。感情のコントロールができなくなったり、学習に集中できなくなったりします。
賢い子を育てる、と聞くと、幼児教育や習い事など、お金をかけることを連想しがちですが、前提にあるのは養育者からの愛情に他ならないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。